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【改正男女雇用機会均等法のポイント:第7回】~セクシャルハラスメント対策の強化(1)
【改正男女雇用機会均等法のポイント:第7回】~セクシャルハラスメント対策の強化(1)

今回から2回に亘り均等法改正の第3のポイントとであるセクシャルハラスメント対策の強化についてお話していきます。

セクシャルハラスメントについては、社会の関心も高く、企業の対応には社会的に厳しい目が向けられています。また、次回お話致しますが、一定の場合には企業名公表の対象となることもありますので、企業の社会的信用にも関わる重要な問題です。今回の改正を踏まえた上で、企業として慎重かつ万全な対応を取る必要があります。

今回の改正点は次の2点です。
  1. 女性労働者のみならず男性労働者に対するセクシャルハラスメントについても保護の対象とされます。
  2. 企業の規模や職場の状況を問わず、職場におけるセクシャルハラスメント対策として雇用管理上必要な措置を講ずることが事業主に義務付けられました。従来は、セクシャルハラスメント対策については「配慮義務」を定めているだけでしたが、今回の改正でより強化され、事業主が具体的な措置を講ずる義務を負うことになりました。

1については第1回でお話した通り、改正均等法が性差別禁止法となったことから当然の改正といえますので、2について少し細かくみていきましょう。

改正均等法11条1項では次の通り定められています。少し長い条文ですが、重要な条文ですので前文を挙げておきます。
「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制その他の雇用管理上の必要な措置を講じなければならない。」

この条文のポイントとなる点を、指針に基づいてお話していきます。

■対象となる労働者の範囲
労働者には、正規労働者だけではなく、パート労働者、契約社員等いわゆる非正規労働者を含む事業主が雇用する労働者のすべてが含まれます
また派遣労働者については、派遣元の事業主だけではなく派遣先事業主(労働者派遣の役務の提供を受ける者)についても、労働者派遣法の規定により、派遣労働者を雇用する事業主とみなされ、この規定が適用されます。従って派遣先の事業主は、派遣労働者に対しても、その雇用する労働者と同様に事業主が講ずべき措置を講ずることが必要となります

■セクシャルハラスメントの類型
職場におけるセクシャルハラスメントの類型には①対価型セクシャルハラスメント②環境型セクシャルハラスメントがあります。指針による内容は、改正前と同じですが、念のため確認しておきます。

①対価型セクシャルハラスメント
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることです。典型的な例として次のようなものがあります。
  • 事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該労働者を解雇すること
  • 出張中の車中において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、当該労働者について不利益な配置転換をすること

②環境型セクシャルハラスメント
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響を生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。典型的な例として次のようなものがあります。
  • 同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に関して仕事が手につかないこと
  • 労働者が抗議しているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと

環境型のセクシャルハラスメントにおける「労働者の意に反して」という要件は、極めて主観的なものです。従って、判断基準としては主として「平均的な女性(男性)の感性」を基準とすることとされています。ただ、実際には判断の難しいところですので、日常業務の中で誤解される言動がないよう研修等を行うなど企業側の配慮が求められます

■雇用管理上必要な措置
改正均等法に基づき雇用管理上必要な措置については、詳細な指針が示されています。詳細は次回お話致しますので、今回はその概要を挙げておきます。

  1. 事業主の方針の明確化及びその周知、啓発
    • 職場におけるセクシャルハラスメントの内容及び職場におけるセクシャルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること
    • 職場におけるセクシャルハラスメントについては、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、周知・啓発すること

  2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    • 相談への対応のための窓口をあらかじめ定めること
    • イの相談窓口の担当者が相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること

  3. 職場におけるセクシャルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
    • 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること
    • 事実を確認できた場合においては、行為者に対する措置及び被害を受けた労働者に対する措置をそれぞれ適正に行うこと
    • 再発防止に向けた措置を講ずること

  4. 1~3までの措置と合わせて講ずべき措置
    • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること
    • 労働者が職場におけるセクシャルハラスメントに関し相談をしたこと又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

以上の通り、セクシャルハラスメントに係る「雇用管理上の必要な措置」は、具体的で詳細な内容ですので、就業規則や服務規律等の見直しを行っておくことが必要です。

次回は、今回ご紹介した指針において示されている具体的な対応例のうち、実務上、重要と思われる内容についてお話していきます。

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