今回から2回に亘り均等法改正の第2のポイントとである母性保護の強化についてお話していきます。
改正均等法2条には、次のように規定されています。
第1回でお話したように、均等法は性差別禁止法の法的性格をもつ法律となりましたが、母性保護の見地からの女性保護規定は、より強化されました。改正の趣旨は、少子化対策としての次世代育成支援にあります。少子化対策は国の政策の急務であり、それだけに、この規定に違反した場合には企業のイメージダウンは大きいといえます。従って今回の改正内容を熟知した慎重な雇用管理が求められます。
■法改正のポイント今回の改正のポイントは次の2点です。
- 従来から禁止されていた妊娠、出産、産前産後休業の取得を理由とする解雇禁止に加え、厚生労働省令で定める理由(労働基準法の母性保護措置や均等法の母性健康管理措置等を受けたこと)による退職勧奨、雇止め等の不利益取扱いが禁止された。
- 妊娠中又は産後1年以内の解雇は、事業主が、妊娠等が理由でないことを証明しない限り無効とされた。
このように改正均等法では妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止が、改正前より大幅に拡充されました。これにより少子化対策としての立法である「次世代育成支援対策推進法」、「育児介護休業法」等と相まって均等法もまた、少子化対策の一翼を大きく担うことになると言えます。
今回は、1について厚生労働省令及び指針のポイントをお話していきます。
①妊娠、出産したこと
②妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を求め、又は当該措置を受けたこと
④産前休業を請求し、若しくは産前休業をしたこと又は産後の就業制限の規定により就業できず、若しくは産後休業をしたこと
⑤軽易な業務への転換を請求し、又は軽易な業務に転換したこと
⑥事業場において変形労働時間制がとられる場合において1週間又は1日について法定労働時間を越える時間について労働しないことを請求したこと、時間外若しくは休日について労働しないことを請求したこと、深夜業をしないことを請求したこと又はこれらの労働をしなかったこと
⑦育児時間の請求をし、又は育児時間を取得したこと
⑧妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと
これらの規定の多くは、労働基準法や、均等法で妊産婦に法的に認められている権利に関わる内容です。その権利を行使した結果、不利益な取扱いを受けるというのは不合理ですので、均等法は当然のことを規定していると言えます。換言すれば、日頃の労務管理において労働基準法や均等法の遵守体制を整えることが、この規定の遵守につながっていくことになります。
■不利益扱いの例次に均等法で禁止されている不利益扱いの例をみてみましょう。指針で例示されているものは次の通りです。
②期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
③あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
④退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
⑤降格させること
⑥就業環境を害すること
⑦不利益な自宅待機を命ずること
⑨昇進、昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
⑩不利益な配置の変更を行うこと
⑦~⑩については、実際の雇用管理において、妊娠、出産等を理由としているかどうかの判断は微妙な問題になってくると思います。又、これ以外でも個別具体的な事情から、不利益取扱いになるケースもあり得ます。指針で挙げられている事項は、通常の雇用管理においても非常にデリケートな問題です。従って、女性労働者の雇用管理に当たっては、処遇の根拠を明確に示した十分な説明と、本人とじっくり話し合うという対応がより必要になってくると思います。
次回は、派遣労働者に関する事項と、妊産婦の解雇の無効についてお話していきます。