少し、硬い話が続きましたので、ここで少し法律を離れて別の角度から均等法を見てみましょう。
前回まで差別禁止の拡大についてお話をしてきました。条文や指針をみると、実にすっきりと割り切れるように思えます。性差別を禁止している均等法も結果の平等まで要求しているわけではありませんので、機会を均等に与えていれば均等法を遵守していることにはなります。
しかし、それだけでは、均等法に関する紛争を完全に防ぐことはできないかもしれません。人には、それぞれの能力や適正の違いがありますので、企業内で各人の処遇に差が生じるのは避け難いものです。この処遇の格差が「性別によるものではないのか」という疑念を抱かせないためには、性差別のない社風を構築することが必要です。これは、法律に基づいたシステムを整備するだけで築けるものではありません。管理職等が、日常の言動に配慮することも必要など思います。例えば、次のような事(又はこれに近いニュアンス)は日常業務の中で何気なく口にしてしまいがちなことです。
「女性なのだから、細かい事に配慮して欲しい。」
「そんなことは女の子にやらせればいい。」
「女性としては、よく頑張っている。」
「女性はともかく男性は、家庭より仕事を優先すべきだ。」
このような言動が積み重なっていくと、社員は、「うちの会社は性別によって差別している」という認識を持ってしまいます。そうなると、公平な基準で処遇をしていても、処遇に不満をもつ人が増えてきて全体的なモチベーションが下がってしまうだけではなく、無用な紛争を招いてしまう可能性が生じてきます。その意味では、均等法は他の法律に比べて、人間的で情緒的な法律といえるかもしれません。均等法に関する法的紛争を防ぐためには、日頃の言動を振り返ってみることも大切なことかもしれません。