今回も間接差別についてお話し致します。
前回お話しました通り、今回の改正で厚生労働省令において禁止される間接差別は3つに限られます。しかし、間接差別になるものは、他にも存在します。実際、今回の改正では間接差別をもっと幅広く禁止すべきだという批判もありました。
そこで、均等法改正にあたって国会の附帯決議がなされました。附帯決議は、法案を議決した際、法律の運用等の基準について、国会の意見として採択するものです。これ自体に法的な拘束力はありませんが、行政が法律の運用をするにあたって、可能な限りこれを尊重する傾向があります。従って、将来的な均等法運用の指標になると思われます。
少し硬い表現ですが、ご参考までに、国会(衆議院)の間接差別に関する附帯決議を原文でご紹介します。
- 間接差別の法理・定義についての適正な理解を進めるため、事業主、労働者等に対して周知徹底に努めるとともに、その定着に向けて事業主に対する指導、援助を進めること。また、厚生労働省令において間接差別となるおそれがある措置を定めるに当たっては、国会における審議の内容、関係審議会における更なる検討の結果を十分尊重すること。
- 間接差別は厚生労働省令で規定するもの以外にも存在しうるものであること、及び省令で規定する以外のものでも、司法判断で間接差別法理により違法と判断される可能性があることを広く周知し、厚生労働省令の決定後においても、法律施行の5年後の見直しを待たずに、機動的に対象事項の追加、見直しを図ること。そのため、男女差別の実態把握や要因分析のための検討を進めること。
- 雇用均等室においては、省令で規定する以外の間接差別の相談や訴えにも対応するよう努め、これまでと同様の必要な措置を講ずること。
今後の労務管理上、重要と思われる点は次の2点です。
- 現在、均等法で禁止されている間接差別禁止事項以外のものであっても、訴訟となったときには、違法とされる可能性がある。
- 今後の動向によっては、間接差別の禁止事項は、追加される可能性がある。
では、他の間接差別とはどのようなものが考えられるのでしょうか。厚生労働省の男女雇用機会均等政策研究会の「男女雇用機会均等政策研究会報告書」において、具体例が挙げられていますが、その中で特に注目すべきなのは次の2点です。もちろん、いずれの場合も合理性、正当性があれば間接差別にはなりません。
- 募集・採用に当たって一定の学歴・学部を要件とすること。
- 福利厚生の適用や家族手当等の支給に当たって住民票上の世帯主であることを要件とすること。
この2点は、確かに現行の均等法に違反するものではありません。ただ、国会の附帯決議の趣旨からしても、将来的には禁止事項となる可能性は高いのではないかと思われます。一歩進んだ労務管理という意味では、今後の検討事項とすることは、必要かもしれません。また、このような配慮は、特に女性社員のモチベーションを高めることにもつながると思います。
間接差別の禁止は、均等法としては新しい領域です。それだけに、直接差別への配慮以上に、慎重に対応することが求められると思います。
次回は、今回の均等法改正で、より強化された、「妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止」についてお話していきます。